取締役専用食堂の扉の向かい側に、ほとんど誰もが物置だと思っている扉があった。 トニー・トロメイはポケットから鍵を取り出し、扉を開けて階段へ入った。 屋上へ行く道はほかにもあった。
クラウンズ・ド・ラ・シャットのサーカス兼劇場は、奇妙な一座だった。 観客の中にはショックを受けて途中で席を立つ者もいたし、毎回必ず誰かが金を返せと要求した。 同じ夜は二度となかった。
取締役たちが散り始めると、トニー・トロメイはヘンリー・ルンドに目配せした。 「私はもう少しここに残って、昔のことでも思い出していようと思うんだが、一つ思いついたことがある。マリア・ダ・シルヴァは来週、休暇を取る。彼女が戻ってきたら、君の秘書にならないかと声をかけてみたらどうだね?」
トニー・トロメイは、テーブルの向こうの壁に掛けられた絵を眺めていた。 父がこの部屋のために選んだ絵だった。もっとも父自身は、それが実際にここへ掛けられたところを見ることはなかった。 北欧の画家、クロード・ハルヴァティによる大作、《Kai sy, teknon》。
取締役専用の食堂は同じ階にあり、そこへ行くにはアルマのデスクの前を通らなければならなかった。 アルマはトニー・トロメイに満面の笑みを向けた。 「さっきはありがとう、トニー!」 「どういたしまして、アルマ。またいつか、同じことをするかもしれないね?」
私はもう25年にわたって、ブラガローネの物語を書き続けています。 物語の時代は13世紀から現代までに及びます。 今のところ、これはその時間軸のいちばん最後に位置する話です。 実を言えば、トニー・トロメイは〈会社〉以外で一日たりとも働いたことがなかった。 もちろん、最初は一族の会社で働き始めた。だが合併によって、彼は〈会社〉の株主となり、取締役会の一員となった。 トニーとマイク 彼は「忠実なるトニー」と呼ばれていた。 何十年ものあいだ、彼はただの一度も少数派に票を投じず、株主総会でも取締役会の提案に反対したことがなかった。 今日は彼の最後の出勤日だった。 そして彼は、〈会社〉の取締役として最後にもう一度、ガラスと鋼鉄でできたその本社ビルへやって来た。北側の角にある彼の執務室は、十九年間そこにあった。
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